セッションについて(2)

前回のプレイスタイルの件についてまず若干の補足を。

プレイスタイルというのは個人の特性ではなく多分に恣意的なもの

という一文がありましたが、これをさらに補強すると、

キャラクターという単語から受けるイメージは、「成立した個人の人格」、つまり「一貫した主義主張を持つ完成した(そして完結した)人格」であり、プレイヤーはそれを演じる上で得手/不得手があるため、それがプレイスタイルになります。
しかし、そういったキャラクターイメージは、「漫画」や「小説」の登場人物を基準しているために「成立した個人の人格」なんてものを想定しますが、それは時間をかけて繰り返し推敲可能だからこそ成立するものであって、セッション中では「リアルタイム進行する状況」の中で「自分とは別の価値観を持った人格」を「完璧に演じる」なんてのは、素人には無理でしょう。(プロとはなにか、という定義は横に置いておきます)
つまり、この時点でキャラクターは恣意的な存在になり、それは「リアルリアリティ」のようなリアリティさに繋がります。だからこそプレイスタイルというものは、個人の特性ではなく、状況に左右されやすい恣意的なものになります。

となります。
別に根拠はありません。わかりづらそーだったんで噛み砕こうと思っただけです。
噛み砕こうとしたら余計わかりづらくなった気もしますが気にしません。


で、ここからが今回のテーマ。シナリオについてです。
GMをする際に、よくシナリオを作れないことが話題になるかと思います。
そこで一つ、簡単なシナリオの作り方を。私流というだけですが。
要点は3つです。


・シナリオの主要登場人物(NPC)を決める
・主要登場人物のシナリオへの関わり方を決める
・どうしてその人物が事件(あるいは問題)になるかを決める


エンゼルギアでの)具体的な例を出します。


・「神を信仰する(神に取り憑かれた)完全機械化兵」とか面白そうじゃね?
・こいつはなんで神を信仰することになったんだろう? やっぱなんかの実験とかの最中だよな。
・実験は成功だったのか失敗だったのか? 神を信仰する(させる)ための実験だったのか、まったく別の実験だったのか?
・で、それはなんか事件性があるんだろうか? あるいは、そういうやつが持つ事件性・問題点はなんだろう?
・こいつはなんで瑞穂基地と関係するようになるんだ? まあ別に瑞穂基地にこだわる理由はないか。PCはどういう立場だったらこいつと接触しやすいかな?
・そんでもって、現時点でのこいつの目的ってなんだ? 事件のオチはどういう方向性だろう?
・ま、こんなもんか。


私がシナリオ作る時は、大体こんなもんです。エンゼルギアの場合、と銘打ってますが、別に妖魔夜行だろうとなんだろうと「NPCを軸に」話を進めるのが私流なんで、大体どんなシナリオでもこんな作り方です。
メインのキーワードは1つ。場合によっては2つ。演出によって、メインのキーワードを二重に使ったり*1しますが、それはマスタリングについてになるのでここでは割愛。
キーワードを1つにする理由は、その1つのキーワードにいろいろな情報を付与するやり方を好むからというのもありますが、「PLの状況把握能力に過度の期待をしていないから」でもあります。セッション中というのは、10説明して1伝わればいいほうだと思ってますが、そうであるなら、最初から1つだけ伝えるほうが確実です。それでさえ伝わるかどうかわからないし。*2


シナリオはシンプルに、「情報の入出力」だけを考えます。「このシーンでこの情報を提示した」「次のシーンでこの情報を提示すると、伏線が1つ解決して、別の伏線が1つ出てくる」以下、これの繰り返し、です。FEAR系ゲームはこの辺の手法をある程度制度化してるのかな? と思ってます。エンゼルギア以外知りませんが。
「情報の展開」をする時、「主要NPCを露出させ、説明する」ことを念頭に置きます。悲劇なら悲劇、喜劇なら喜劇、どちらだったとしても、「NPCを軸に話を展開させる」以上、それが必須になります。で、そうすると、必然的にヒューマンドラマになります。少年兵がPC1推奨なエンゼルギアですから、ヒューマンドラマとの親和性は高いですし。
ここで単純に「いまの状況」「これからの状況」を淡々と描写すると、盛り上がりません。「こういうことがあってこういうことになってます」じゃ、「ああ、じゃあなんとかしますかね」で終わりです。それが悪いとは言いませんが、盛り上がりという点では下策もいいところです。


具体的な手法としては、「ギアドライバー/完全機械化兵/機械化兵で本人との直接的な接触によるキャラクター提示」を行い、「管制官/情報将校/指揮官で周辺の情報と接触させキャラクターの提示」を行います。そんだけです。別に伏線がどうこうとか考える必要もありません。「NPCの設定」「NPCがそうなる経緯」「NPCが事件(シナリオ)に絡む経緯」が決まっていれば、それらについてだらだらと説明するだけです。
説明だけしてれば、PLは勝手に盛り上がります。「二律背反な要素を盛り込んで、助けたらなんか不利益があって、助けなかったらなんか後味が悪い」とか、そういう要素を用意してあげると優しいかもしれませんが、別になくても盛り上がります。
PLは自分勝手なものです。GMの思惑の外でなんか考えてます。別々の人間なんですから当然です。であれば、なるようにしかならないんです。あくまでも「現在の状況を描写するために必要な情報」を整理しておくのがシナリオです。それ以上でも以下でもありません。
極端な話、「開始時点での状況」を説明できれば、各シーンの記述なんて必要ないと思ってます。どう終わるかは、GMとPLが手作りしてればいいんですから。「こういう終わり方をしないとだめ!」なんて考えるようになると、吟遊詩人傾向が強まってしまいます。*3


こういうことを書くと、「自分にもできそう/自分にはできなさそう」という反応が必ずあると思います。*4
極力単純化して書いたつもりですが、この文章を読んで「自分にもできそう」なんて思う人はほとんどいないと思います。
しかし、ここで説明しているのは「シナリオの記述方法」であって、「セッションのハンドリング方法」ではありません。この点、誤解しないでください。セッションはシナリオの記述だけで成立するものではありません。シナリオがどうのこうのと考えたって、セッションがうまくいくわけではありません。
セッションを上手に回すには、経験を積むしかありません。シナリオはマスタリングを支えるものであっても、セッションの方向性や結果を決定付けるものではありません。経験を積む過程で、自分なりのシナリオ記述法が見つかると思います。他人のシナリオの書き方なんてのは、自分のシナリオの書き方が見つかるまでの借り物と考えれば十分です。
シナリオの書き方で右往左往するよりも、自信を持ってGMを出来るような、そんな場を探すことから初めてください。

*1:一回どんでん返しして、もう一度どんでん返しするみたいな構造

*2:オンラインセッションだと特にその傾向が強まります

*3:あんまりフリーすぎると着地点が危うくなりますが。この辺のバランスは経験していくしかないので、まずは実践あるのみです

*4:明言されることはなかったとしても