嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん

サブタイトルは「ストーリーの作り方とシナリオの作り方」です。
ちなみにタイトルのシリーズについてはまだ1巻しか読んでません。ネタバレがある可能性が高いので、未読で今後読む予定のある人は読まないほうがいいかも。

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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%98%98%E3%81%A4%E3%81%8D%E3%81%BF%E3%83%BC%E3%81%8F%E3%82%93%E3%81%A8%E5%A3%8A%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%BE%E3%83%BC%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93


小説を読む時、「これはシナリオとして使えるかどうか」という観点で読む癖がついてしまっている今日この頃ですが、とりあえずひとつの結論として、「小説のストーリーはそのままではTRPGのシナリオには転用できない」となります。当たり前ですけど。
もちろんいくつかの前提があるので、絶対ではないし例外もありますが、基本的にはそういう結論です。あと、私のシナリオの作り方だとできないってだけかもしれないので、その分は読み手の方が勝手にさっぴいてください。絶対普遍の真理を書いたことはいまだかつてないです。たぶんこれからも。
で、なぜできないのか=どうすればできるのかという観点から見た場合、最近読んだエントリタイトルの小説が参考になるかなと思った次第。


具体的に説明しましょう。
「みーくんとまーちゃんをPCに据えたシナリオは作れない」
「上社奈月と坂下恋日をPCに据えたシナリオは作れる」
差はなんなのかというと、「動機が明白になっているのはみーくんとまーちゃんだから」なんですね。そして動機がストーリー、この場合は事件自体に直結しているのが、みーくんとまーちゃんだからです。
裏返しましょう。「みーくんとまーちゃんが別の動機を持っていた場合、このストーリーは成立しない」ということです。ところが、上社奈月と坂下恋日については、特別明白な動機はないし、立場ですら変容を受け入れる余地がある立場であり、役回りです。上社奈月は探偵でもいいし、坂下恋日は学校の先生でもいい。学生時代からの知り合いでなくたってかまわない。


しかし、みーくんとまーちゃんが学生ではなかったり、過去に共通の体験を持っていなかったりすると、この話は成立しません。まあ学生の部分はまだしも弄れますけど、過去の共通体験についてははずせません。
かつ、「みーくんとまーちゃんのどちらかが過去の体験について明確に記憶して行動する必要がある」という前提があります。しかし、PC間の情報格差は、基本的には「うまくない手」です。
吟遊詩人を真正面からやるなら、みーくんとまーちゃんがPCでもかまいません。GMを接待するセッションならそういう方向性もありでしょう。しかしそんな極端に限定された状況でもない限り、シナリオとして運用することはできない、ということになります。


一方の上社奈月と坂下恋日の立場、および視点からは、過去に起こった事件の正確な情報はないし、持つ必要もありません。場合によっては事件解決に明確な動機すら持っていないかもしれません。
彼女たちの立場は、「現在、居住地域で起こっている連続殺人事件に、それぞれの立場から関わる必要があったり、知人が容疑者である可能性がある」というものです。
"PCとして動かすのが容易"かつ"PCの設定の自由度が高い"のは、どう見比べても彼女たちになります。


第二の結論をまとめると、「小説の主人公は重要NPCにはなるが、PCにはならない」ということです。
そのNPCがなぜ行動するのか、具体的な手段としてどういった方法を選択するのかについて、GMには例となる情報があります。この辺は、まんま既成シナリオに掲載されるような情報と同じです。そこからイメージを膨らませて実際のセッションにつなげるところまで、既成シナリオの利用方法と同じです。
そうした状況に対して、PCがどのように動くのかはGMは想定できません。場面誘導によって与える情報は制御できますが、PCの動機も、行動の選択も、シナリオ崩壊に繋がらない限り、GMには強制(を要請)する権限も必要もありません。
PCというのは、状況やNPCに振り回されるものです。それは、GMとPLの情報格差によって発生します。そうしたものを意識すると、シナリオも作りやすい=既存作品をアレンジしやすいんじゃないでしょうか。


既存の作品を使用する場合、シナリオとしてはどうしても換骨奪胎する必要が出てきます。
しかし、換骨奪胎が容易にできるようなら、そもそもオリジナル(っぽい)シナリオだってすぐに考えられると私は思います。
小説を手本に、シナリオを作る場合、上記のような手法を取れば、結果的に換骨奪胎っぽくなるし、もしかしたらPLにも元ネタを悟られないか、うまくアレンジしたと思ってもらえるんじゃないでしょうか。
ま、世の中には、元ネタがあること自体に拒否反応を示す人もいるので、絶対ではないですけども。
「シナリオは作らないとうまくならない」けれど、「どうやって作ったらいいのかわからない」人向けに、こんなこと書いてみました。