ある作戦計画参加者の手記(1)

『シ号計画』

恐ろしい計画に携わってしまった。いまとなっては引き返す術もない。
「神の復活」を目指すこの計画は、それ以外にもいくつかの目的があるようだ。神殿庁の執拗なまでの介入、投入される資金の出所、軍部での最重要機密扱い、すべてが陰謀じみた計画の重要性を強調している。
そもそも神とは何者であるのか。
計画については概略しか知らされておらず、他の部署が行っていることは茫として知れない。私の部署では、神が顕現した際、それを留め置くための結界を研究している。
結界技術自体はそう新しいものではない。いまさら研究する余地もないほどである。陰陽部は数百年の時をかけてこの技術を研鑽してきた。いま研究されているのは、結界技術それ自体ではなく、その効率化である。
いかに小規模な結界で高度な霊的存在を押し留めるか。陣の構成の再検討に始まり、術者の配置、神言の解析、より対象を限定化するための術式の構築、様々な面から、従来の結界とは異質なものを作り出そうとしている。
効率化が可能になれば、いままでと同じ霊力で、より大規模な結界も敷けるようになる。これは中々に意義のある研究だと、陰陽部の旧態依然とした体質にうんざりしていた私は、喜び勇んで計画への参画を申し出た。
それがどうだ。この計画で使われる少女は、恐れ多くもミカドの血脈に連なる者である。確かに古代種の血を濃く引く血統は、ミカドの血脈か、高級貴族にしかないとはいえ、現人神に対してそのような振る舞いが許されるのだろうか。
いや、そもそも、そのような尊いお方をこの計画で使用するように指示を出したのは誰かという疑問がある。
これ以上は考えないようにする。想像もしたくない。