(28−4)
やるべきことは決まっていた。後はそれがいつになるか、ということでしかない。
自分の部屋で、ぼーっとしながらベッドに横になり、天井を見上げる。なにがあろうとなかろうと、この部屋にいるのが自分一人という状況は変わらない。
二人になったとしても、それはそれで困るんだろうけど。想像しただけで頭が痛くなるほどに、それは望ましくない。
口ではなんと言おうとも、自分はそういうヘタレだ。真智のことが好きだなんだと言いながら、手を出す勇気なんて欠片もない。
真智が弱ければいい、なんて思う。自分がどんな手段を使ってでも慰めなきゃならなくなるぐらい、弱ければいい、なんて思う。
そうして真智のせいに出来なければ、自分はなにも出来ない。好きと言うことも出来なければ、愛していると囁くことも出来ない。
お前の弱さに救われるんだ、と言ったら、真智は傷つくだろう。泣くかもしれない。
真智に嫌われることを思うと泣きたくなる。だから言えない。そのほうが真智にいいんだろうと思ったとしても、口に出すことはできない。
もう、好きな人に嫌われることには耐えられそうにない。
嫌われればいいとずっと思っていたはずなのに、なぜ好きになってしまったんだろうか。
携帯が鳴った。これにかけてくる奴は大体決まってる。
「俺だ」
『私』
なんだこの名乗りあいは。
「どうした? こんな時間に。俺様が恋しくなったか?」
軽口ならいくらでも叩ける。軽口だとわかっているからなのかなんなのか。
『だいぶ違うけど、ちょっと近いかな』
電話の相手、真智が素直な時は、要注意信号だ。なにかをやらかす覚悟を決めた時……迷いを吹っ切ろうと決めた時、真智はそれ以外のことに目が向かなくなる。
真っ直ぐすぎるほどに真っ直ぐだから、歪むことを知らない。そんな真智を知るたびに、自分の歪んだ性根に泣きたくなる。
「行くなら止めねーよ」
『……私、時々ヴァンって超能力者なんじゃないかと思う』
当たらずとも遠からずだ。そういうのは、なんとなくわかる。
「真智がわかりやすいだけだろ?」
『そうかもしれないけど。……じゃあ、待ってるから』
「おう。待ってろ。すぐ行く」
真智は一人で行く、とは言わない。一緒に行こう、と言ってくれる。いつでも一緒だ、と言ってくれる。
それがどれほど俺の喜びになっているのか、わかっているだろうが、真智は知らない。俺は本当に、ただそれだけのために死んでもいいほど、それに救われている。
置いてきぼりにされる悲しさは、辛さは、死んでもごめんだ。そう思う。
俺は真智に囚われたいと思っている。そんな歪んだものは真智に見せたくないと思っている。
どうしたって許されがたい。俺は真智を何一つ救えない。
「やれやれだ。世話のかかるお姫様だぜ」
それが自分の救いなのだからどうしようもない。真智に必要とされ続ける限り、俺は俺の価値を認めることができる。
真智に必要とされなくなったら、俺は死ぬだろう。漠然とした確信だけがある。
出かける準備を終えて、扉に手をかけた。
再び電話が鳴った。