プレイヤーと物語の抽象化

GM同様に、PLも物語を抽象化して把握する技術がある程度必要です。
よくセッションがこけた時に発生している状況が、「状況の認識のずれ」で、先述したような、「敵を倒すシナリオ」を「敵を説得するシナリオ」と誤認したりする状況があげられます。
大概、この辺の誤認にはPC1の動きが大きく関与していることが多く、PC1が斜め方向に進むと、PC2以下はよっぽど強引な手法を駆使しないと、本来の流れに回帰させることすら難しくなります。なぜならPC1というのは、物語の牽引役として一定以上の責任と権限を委任された存在だからです。GMもPLも、PC1というのはそういうものだ、という前提と認識して行動してしまうからです。


とはいえ、じゃあPC1は慎重に立ち回って状況把握・分析に努めたほうがいいのか? ということでは決してなく、ただ、PC1は要所要所で提示された選択肢において、選択の方向付けと周囲の合意を得る、いわばPC内NPCとして物語を誘導する立場を負う、ということでしかありません。
これは、いわゆるリーダーとしての行動です。
リーダーは、グループ内における情報の集約と分配によって決定されます。決してリーダーシップや能力に依存するものではありません。情報を集約する人がリーダーになるし、集約した情報に基づいて指針を定め、それを伝える人がリーダーになります。
まあ、普通それをリーダーシップと呼ぶんですが。カリスマ性とか、そういうのは特にいらなくて、ただGMが提示した情報を丁寧にまとめて、状況を周囲にわかりやすく伝えるだけで問題ありません。伝達能力に問題のある人は、リーダーにはなれないし、たぶんPC1にもなれません。PC2かPC3あたりでぼさっとしてるしかないでしょう。全体最適を嗜好するなら。
そして、状況を周囲に伝えるためには、情報の抽象化が必要になります。比喩を活用できれば理想ですが、比喩は往々にして致命的ではない認識のずれを生むものなので、多用するのは推奨されません。使えば使うほどずれるのが比喩で、比喩というのは元からそういうものだからです。ただし比喩が使える程度に物事を要約化し、把握して、周囲に伝えるという能力は、必要になります。


では状況や情報の要約、抽象化はどのようにして行うのか、という点において、メタ視点が出てきます。結局のところ、状況を客観的に観察し、状況に関わる自分の立場すらも客観視して把握しなければ、状況の要約なんてものはできません。自分の状況しか見ていない人は、相手(PCやNPC)の状況が見られませんし、そもそも自分の状況すら把握できない人は、相手の状況なんて把握できません。
そうした上で、状況に添った無難な選択をするか、状況を破壊してでも突破するような賭けに出るかは、個人の好みになります。
個人の好みを発揮するというのは、これでなかなか難しいものなのです。もちろん、無意識的にやっている人/やれている人もいるので、難しさは人それぞれなんですけども。