あるプロジェクト参加者の手記(1)

『Project Maria』

本プロジェクトの目的は、戦場における速やかなる戦力補給、及び敵戦力の撃滅を同時に実現することである。
天使化には瞬時に膨大なエーテル反応が発生することによる爆発、いわゆるマスケンヴァル現象が伴う。この現象を利用し、前線において天使化を誘発、マスケンヴァル現象による敵の殲滅及び、天使兵による掃討を同時に実現することを可能にしている。
しかし、天使化というものは、そう容易く制御できるものではない。また、天使化によって天使兵になったものを制御することは必ずしも可能なわけではない。
そもそもこの天使兵とはなんなのか、という疑問がある。現在でこそ、合衆国の主力兵器として活動しているが、時には敵味方関係なく戦場を蹂躙するその姿に、違和感と恐怖を覚える兵士も少なくない。
現時点ではその正体は明確にはされていない。スペックの不明な兵器を使う軍隊などお笑い種だが、天使兵については高度な情報管制がしかれており、軍内部でも高級士官クラスでなければその概要すらうかがい知ることはできない。
巷で取りざたされている風評を信じるわけではないが、そもそも「エーテル」とはなんなのかという疑問がある。エーテルを無尽蔵に発生させる「天使核」及びそれのエネルギー利用を可能にした「V機関」は、敵国の技術者(現在は合衆国に亡命している)が開発した技術である。
しかしその技術は、「どのようにすればエネルギーを得、活用できるのか」を体系化したものであり、それが「どのようなエネルギーなのか」については一切解明していない。(証明されていないというだけで仮説はあるのかもしれないが)
これもまた風評の域を出ない話ではあるが、一説によるとエーテルというのは「意志を持つエネルギー」であるという。そして天使兵というのは、この「意志を持つエネルギーの集合体」であるというのだ。
その核となるのが、俗に天使核と呼ばれる「エーテルコア」であり、これは高密度のエーテル結晶体であることが確認されている。天使兵はこれを中心にその肉体(?)を構成しており、この天使核が損傷しない限り、無限に再生が可能であるといわれている。
だがしかし、無限のエネルギーなどというものが本当にあるのだろうか? 技術が進めば進むほど、その理論にはなにか根底から誤りがあるのではないかという気がしてならない。