あるプロジェクト参加者の手記(3)

『Project Maria』

今日、天使の血が届いた。これを使って天使を作るという。
しかしこのプロジェクトの根幹は、これだけでは完成しない。天使の血で天使化を誘発する(ますますもってエーテルとやらの意志を感じる話だ)ことはできても、制御可能な天使"兵"を生み出すことはできない。
そこで考えられた方法が、天使兵の天使核を素体に移植する方法である。これによって、天使核に天使のエーテルを食わせ(天使核自体はエーテルを放出するものであるはずなのに、この矛盾はなんなのだろう)、天使兵を生み出そうというのだ。
理論的には、欠けた天使核を再生させるという、ただそれだけのことである。再生させるための素材として人間を使うというだけのことだ。真珠の作り方に似ているかもしれない。このプロジェクトの発案者は案外そこから着想を得たのかも。
素体には子供が使われることになった。これもまた不思議な話だが、成人に比べて子供のほうが天使核の成長が早いという統計結果が出ている。原因については不明だが、エーテルの意志と成人の自我が反発するせいではないか、と根拠のない推測を立ててみたりもする。
素体になる子供については、調達部が近々手配することになったようだ。天使の血を用意してくることといい、天使兵の核の欠片を用意してくることといい、調達部というのはなにをやってそんなものを手に入れてくるのだろう。
一番怖いのは人間なのかもしれない。そんなことをいまさら思う。