あるプロジェクト参加者の手記(4)

『Project Maria』

今日は三人死んだ。どうにもうまくいかない。
調達部にしても、調達できる子供には限りがあると言い出している。仰々しい設備のわりに成果が上がらないプロジェクトには、協力するにも限度があるということだろう。どうにかしなければ。
原因はわかっている。天使の血と呼ばれているものが強力すぎるのだ。過度のエーテルの発生によってエーテル中毒のような症状を起こし、天使化する前に死に至ってしまう。全身の穴という穴から血を噴き出して死ぬ姿は、凄惨の一言に尽きた。
どうもうまくない。そもそもの考えが間違っていたのだろうか?
まずは天使兵の天使核を移植する。ここまではそう問題はない。拒絶反応が出る確率もいまのところ一割以下である。
その後、天使の血を投与するところで、すべてが壊れてしまう。どうすれば素体を壊さずに済むだろうか。
特定の条件下で、天使の血が天使兵の天使核と異常な反応を起こすことはわかっている。それこそがこの実験を成功させる鍵であり、天使化を促すものだというのに、それこそが失敗を引き起こしている。
なにが足りないというのか。
エーテルの噴出を、そう、天使核と天使の血の反応を、任意のタイミングで起こすことがまず先決である。自陣で自爆する兵器など話にならない。
そして、確実に天使化が起こらなければならない。いや、一定以上の確率で天使化が起こればそれでいい。この実験が成功さえすれば、素体となる子供などいくらでも調達できるだろう。
足りないのは、素体のエーテルへの耐性ではないだろうか。