(23)

 中学生になった。だからといって生活が変わるわけでもない。少女がいなくなった分、孤独さが増しただけの日常だった。
 それでいて、世界に対して興味を持てなかったのだから、その孤独も結局は自分が選んだものだということだろう。
 拒絶される可能性よりも拒絶されないことを選んだ。臆病だっただけである。
 少女がいなくなり、火が消えたような生活が一年ほど続いた。
 ある日、院長に呼び出され、病院に行くことになった。理由については一切聞かされなかった。院長は固く口を閉ざし、なにを聞いても答えてはくれなかった。
 病室で待っていたのは、あの少女だった。
 わけがわからなかった。今頃どこかで幸せに暮らしているんだろうと、そう思っていたのに、目の前にいる少女は、生気が失せ、正気すらも怪しい焦点の定まらない眼差しで、ぼうっと宙を見据えるばかりだった。
 怒鳴ったのは、あの時が初めてだった気がする。院長を怒鳴りつけ、状況の説明を求めた。
 私の責任だ、と、院長は言った。引き取られた先で虐待にあっていたんだ、と言葉少なに語った。
 院長はまだなにか喋っていたような気もするが、ほとんど聞こえていなかった。ただ少女の前でひざまずき、決して交わらないその眼差しに絶望し、嗚咽がこみ上げてきた。
 自分には何ができるのか。初めてそんなことを考えた。