マニュアル的ストーリー

オープニングシーン、ミドルシーン、クライマックスシーン、エンディングシーン。
これらのシーンに区分され、シーン単位でセッションが進行するエンゼルギアは、ストーリー自体がマニュアル化され、「ここは導入」「ここは展開」「はいここで盛り上がる」「そろそろ締めに入りましょう」という流れが、GMにもPLにも事前に周知されているので、事故が起きる確率が減っています。
これらマニュアル化が「なぜ必要なのか」という疑問が湧いたんですが、即座に「一定のクオリティを守るため」だと答えは出ます。なぜなら「マニュアル化」自体が「一定のクオリティの維持」のための手法だからです。


さて、そうして楽しみまでマニュアル化されていくことの先は、定型のストーリーでしょうか。ストーリー「展開」のマニュアル化、定型化は起こっても、ロールプレイ自体は幅が広がる、という意見がありました。

こちらのコメント欄、nishiyama氏と、Vampire.S氏のコメントです。引用させていただきます。
物語駆動型システム - まりおんのらんだむと〜く+

nishiyama 『FEARゲーは技量や面子に頼らずに一定の水準の楽しさを確保できるような設計を目指してきたんだと思います。良くも悪くもマニュアルです。
 たぶんグローランサの目指しているのはそこではないでしょう。』 (2006/02/19 20:13)
Vampire.S にいさま 『実は、グレッグはマニュアル化された方が喜ぶ気が……w マニュアル化されることで、(PL から見た時のシナリオの見通しが向上して)自由度が上がるのは、まぁグローランサでも許されることではないかと思いますね。』 (2006/02/20 00:11)

なるほど、と得心しました。確かにテンプレートが用意されていれば、その上になにを盛り付けるかを考えることに腐心すればいいことになるので、リソースの配分箇所が変わり、ロールプレイに注力できるようになります。
これはロールプレイ特化型ゲームとしては至極まっとうな設計です。


一方で、その結果、戦闘バランスが著しく崩れることになっているのも事実だと思います。
こちらを参考してもらえれば、エンゼルギアの戦闘、あるいは判定における問題点がわかるかと思います。
2006-02-22 - 綾瀬のTRPG徒然日記
追記
しまったエンゼルギアの戦闘についてはこっちでした。ごめんなさい。>id:yatukazeさん
2006-02-20 - 綾瀬のTRPG徒然日記


ロールに特化し、ロールを優先するが故に、ゲームとしてのバランスが著しく悪化している。エンゼルギアというゲームはそういうゲームである、と私は理解しています。割り切ってるとも言えます。
「よいゲーム」を目指すか、「よいストーリー」を目指すかを、システム選択の時点である程度方向付けている。「だから」エンゼルギアを遊ぶ際にゲームバランスを言い出すのは*1ナンセンスということになります。わかった上で遊ぶべきゲーム、ということです。
それは一歩間違うと「シナリオのあるなりきりチャット」と変わらないものですが、しかし極論すれば、「なりきりチャット」と「セッション」の区切りなんて曖昧です。
余談ですが、うちのサークルでは、これは区別できないものとして、「セッション」の定義を「告知を募集締切三日前までに出す」というルールを作っています。告知内容やチャット内容(あえてセッションとは言いません)、アフタープレイ等の内容には、一切触れません。


「判定」が発生すると、数値が出てくるので、「勝ち負け」の概念が発生しやすくなります。
「ロール」の場合、「自己満足」になるので、「勝ち負け」というよりは、「満足不満足」になります。
明確な形になる「勝ち負け」を避けて、曖昧な形になる「満足不満足」という評価軸になっている現状は、とても日本的なものと私は捉えてます。
それでいて同時に、個人主義の表れでもあると考えています。「勝ち負け」は個人だけではどうにもなりませんが、「満足不満足」はとりあえず個人(自分自身)だけでもなんとかできるからです。


マニュアル化されたストーリーは、「満足しやすい展開」を引き出すためのサポート機構です。従来、難しいとされている「空気を読む」「先を読む」が、それほど苦労なく可能になるからです。
もちろん、そのマニュアルを理解するまでの努力は必要ですが、どこまでもストーリー、そしてロールに特化したシステムである、と結論付けたいと思います。

*1:一定以下の水準では