(27−1)

わけもなく隠します。
あとたぶんハッピーエンド方向には進みません。
タイトルは仮称ですが「君に届く物語」です。
あと三回ぐらい書けば着地点までいけるんじゃないかな、と。
あんまり書く気ないというか、妄想してるだけで楽しいんですが。


 なにが起こったのか、など考えるまでもない。
 標的は自分だった。捨てられた実験体である自分(いまだにその実験がなんだったのかすら知らない)が狙われた。ソレはまあいい。そういうこともあるだろう。
 だが、それに巻き込まれて、なぜ彼女が死なねばならなかったのかがわからない。
 そして、なぜ自分はそんなものを招いてしまったのかがわからない。
 いくらシャルロッテと同じ顔をした敵が相手だったとはいえ、なにを躊躇う必要があったのか。シャルロッテは死んだ。自分が殺した。死人は二度も死なない。だからそれはただの偽物だ。
 わかりきっていたのに躊躇った。引き金が引けなかった。また私を殺すのと言われて、心が揺らいでしまった。
 その敵は、その隙に引き金を引き、自分を庇って、彼女が撃たれた。
 彼女が撃たれた瞬間、引けなかったはずの引き金が引けた。潰れたトマトのように破砕し尽された敵を見向きもせず、彼女を抱き上げた。
 よかった、と彼女は言った。私にも君が守れた、と彼女は言った。
 なにを言えばよかったのか、といまでも思う。死ぬべきは自分で、彼女が自分のために死ぬ必要なんてどこにもなくて、いっそ自分が殺されてしまっていれば彼女が死ぬこともなくて、こんなことにはならなかったんだと、そう言えれば楽になれたんだろうか。
 私はずっと覚悟してたから、と彼女は言った。アリカちゃんを殺した時に、私も誰かのために死ぬことになるんじゃないかって思っていたから、と彼女は言った。
 それは、自分には割り込む余地のない絆で、彼女は結局、自分の前任者(彼女に射殺された)との思い出を、なによりも大事にしていたということだろう。
 そんなことは知っていた。承知の上だった。自分はそれでも、その上で、彼女との絆を築いていたと、そう思っていた。
 死の間際に、彼女は言った。
 自由になって。
 その言葉の意味は、まだわからない。そしていまでも、死に損なっている。
 
 胸にぶら下げたペンダントを握り、目を閉じる。出撃前の、いつもの儀式。
 今日もまた、敵を殺そう。君のために、自分のために、守るべきものを守るために、虐殺すべきを虐殺し、蹂躙すべきを蹂躙し、駆逐すべきを駆逐しよう。
 自分は狂わない。狂うなんて逃げは許されない。どこまでも正気に、どこまでも残酷に、どこまでも孤独に、この残酷な神の支配する戦場に報復する。
 神の望みなど、なにもかも打ち砕いてみせる。
 奇跡など起こらない、奇跡など起こさせない。
 破壊するがために破壊し尽してみせる。なにもかもが間違ったこの世界をまったいらにするために。