(27−2)
続きです。
彼女を失ったのは誰のせいだ、と責められた。
彼女はなぜ死ななければならなかったんだ、と詰られた。
すべては自分が悪い。自分の無力が悪い。軍人になって、少しばかりの力を行使する術を得て、自分はなにも慢心していたのか。
力が欲しいか、と問われた。
力が欲しい。圧倒的な力が欲しい。なにもかもを問答無用で救えるだけの力が欲しい。何一つ傷つけることのない力が欲しい。
それが得られるのなら、死ですら厭わない。彼女を死なせた自分は、シャルロッテを殺した自分は、幾度殺されても罪の償いようがない。
だから、救いたい。救わせて欲しい。救えなかった彼女のために、生かせなかったシャルロッテのために、自分に、あなたを、救わせてください。
それは、意志ある天使だった。人語を解する天使だった。そんなものを、誰がどうやって捕らえ、兵器に改造したのかは定かではないが、その天使は、鉄の装甲を身にまとい、ただひたすらに、乗り手を待っていた。
己を御する価値のある者にだけ乗られてやろう、とその兵器は言い放ち、圧倒的なまでの性能があることが確認されていながらも、誰一人それに乗ることは適わなかった。
汝、力を欲すれば、その道、破滅へと通じるモノ也。
上等だ、と思った。何かを得るためにはなにかを失わなければならないというのなら、いまの自分には失って恐ろしいものなど何一つない。なにもかも、この身ですら惜しくはなく、そんなものと引き換えに力が得られるというのなら、かまうことなどなにもなかった。
あなたはいない。もういない。あなたのために、自分の選ぼうとしている道は破滅の道だけど、あなたは決してそれを望みはしないだろうけど、それでも自分は、それを望む。
人は力を望み、兵器は人を望んだ。
サタンと名づけられたそのシュネルギアによって、最後の決戦の火蓋は切って落とされた。