『矛盾なき時間』(2)

ミドルシーン タイムマシーンが出来るまで

完全機械化兵との会話
「タイムマシーンというのは、本来存在しないの」
「ええ、確かに私はそれを使ってここにいるけれど。それは、私の世界がイレギュラーだと判断されたからで、そうでなければ……つまり、本来の時間の流れの中にあるこの世界では、それは決して完成しないものなの」
「どう言えばいいのかしら……誰が、という部分は保留しておくけど、タイムマシーンは、『この世界はイレギュラーだ』と判断された時のみ、動作するの」
「そこに原理なんてものはなくて、ただ『時間の修復が必要だ』となった時に、必然的にそれは動き出す」
「だから、タイムマシーンによって時間が修復されてしまうと、タイムマシーンはおろか、それを使った者も消滅してしまう」
「タイムマシーンは、その存在ごと消滅するという前提の元にしか生まれない」
「それがタイムマシーンが存在しない理由であり、その概念が存在する理由」
「もちろん、こんなのはタチの悪いジョーク。タイムパラドックスを何一つ解決しない、ただの言葉遊び」
「でも、時間というものの正体は誰も知らない。『もし』それに人格があり、『もし』それに判断主体があったなら……そういうことも『あるかもしれない』という御伽噺」
「一番最初に判断を保留した『誰がそうするのか』ということがはっきりすれば、こんなくだらない話の生まれる余地もなくなるんだろうけど」
「昔の人は、それを神様と呼んだのかもしれないけど、私は違うと思うな」
「……違うといいなって、思いたいだけかもしれないけど」