シナリオ構造とストーリー進行、あるいは設定マニアによる設定の盛り込みと放棄

長ったらしいタイトルで遊んでみたくなった、別に後悔はしていない。
設定というのはなんのためにあるのか? ということを、改めて考えています。
というのも、久しぶりにちょっとキャンペーンでもやろうかしらという気になり、メンツも募集し、応募があったのでキャンペーン設定を決めていかねばなあ、という状態まで到達したからです。
今回、いままでの反省を踏まえて、PCに関わる設定はすべてオープンでやってます。これは、PL間の情報格差は、いい方向には作用しないと考えているからです。


GMとPLの間に情報格差があるのは当たり前なので、その点は考慮に入れません。でも、GMとPLの情報格差にしたって、PLがストーリーを理解するのを阻害するような格差はいただけません。PLを置いてきぼりにしたところでGMにメリットはないからです。
それを踏まえた上で、公開したほうがいい情報と公開しなくてもいい情報が存在する、というのは、GM経験があればご了解いただけるのではないかと思います。ではどういう情報が公開したほうがいい情報で、どういう情報が公開しなくてもいい情報なのか、ということが重要です。


私が考えるに、「ストーリーに関わる設定はオープン」「演出に関わる設定はクローズ」というものです。そして、オープンかクローズが判断に苦しむ情報はオープンが基本、と考えています。
クライマックスシーンで、ラスボスに動機告白というネタばらしをやらせた時に、PLがぽかーんとするような設定クローズはなし、ってことです。匙加減は個々のGMが判断すべきことですが、というかそんなのやってみないとわかんないと思いますが、心構えとしての妥当性は十分あると考えます。
これは、私がオンラインセッション中心で遊んでいるからだ、とも言えると思います。オンラインの文字中心のコミュニケーションでは、十言って一伝わると考えたほうがいいぐらい、情報伝達は非効率的です。そして、ストーリー展開において、伏線が伏線として理解されるためには、世界設定が理解されている必要があります。
伏線とはなにか、とりあえずショートカット登録されてて便利なのでしょっちゅう使うgoo辞書に当たってみましょう。

ふくせん 0 【伏線】 - goo 辞書
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?kind=jn&mode=0&MT=%C9%FA%C0%FE

(1)小説・戯曲などで、のちの展開に必要な事柄をそれとなく呈示しておくこと。また、その事柄。「―を張る」
(2)のちの物事の準備として、前もってひそかに設けておくこと。また、その事柄。「―を敷く」

つまるところ、伏線というのは設定の開示であって、隠匿ではないということです。
そして、情報伝達が困難であることが想定されるオンラインセッションの場で、伏線を伏線として認識してもらうには、それが伏線であることがわかるように設定を理解しておいてもらう必要すらあります。
ここでは、伏線の機能自体が、小説のような「謎の(解法の)提示」ではなく、「設定のPCへの開示」となっています。TRPGと小説では、伏線が異なる機能を果たす、という言い方もできるかもしれません。


もちろんこれは、メタプレイへ依存するやり方です。そして、PLがPCとPLの情報格差をどこまで分離できるかというのは、個人の技量の問題に還元されてしまいます。
しかし、今回のキャンペーンには、もう一つの側面があります。
「参加者全員がいい気になって妄言を吐きまくる」
これは楽しみ方の一例に過ぎませんが、こうした楽しみ方を前提にした場合、事前の情報開示は、伏線の「設定のPCへの開示」という機能をより強化します。「ここでこの伏線が出たということは、PCはその設定に気づいてもいいってことだな」とPLが把握することができるようになるからです。
この場合、PLとPCに情報格差があるのは一瞬ですし、「知っている/知らない」という単純な把握が可能になります。そして伏線に一つ気がつけば、それに関連する要素は基本的には「気づいちゃったことにしてもいい」ことになります。なにしろ、いい気になるためにやってるわけですから。


しかし、シナリオ設定にはまた別の問題というか側面もあって、把握する必要のある情報がPLの許容量を超えた場合も、PLの置き去りが発生してしまうということです。これはもう純粋にPLの能力の問題なので、適宜判断していくしかありません。
ただしPLの理解を助けることはできます。情報を整理することです。そして情報を整理するということは、PLが把握している情報を整理するということでもあります。この時、GMは開示したつもりになっていたのに、PLが理解していない情報があったとしたら、情報整理にかこつけて提示してしまうことすらできます。


必要なのは、GMとPLが楽しめることであって、設定を隠匿することでも、ましてやストーリーにどんでん返しを用意することでもありません。
PLがストーリーにどんでん返しを要求するということは、少なくともGMが提示した情報を常に把握するぐらいの根性が必要です。そうでなければ、GMがどれだけきちんと設定を練りこんで逐一開示していたとしても、PLが理解していなかったせいでどんでん返しが不発になりかねないからです。
そして、やれGMが悪い、やれPLが悪いなどと責任のなすりつけ合いに発展するのは不毛です。結果は両者に等しく降り注ぎますが、責任は情報を多く有するGMに多く帰することになるからです。
PLの要求にGMが応えられなかったから楽しくなかった、というのは、少なくともPLが要求せずにGMが提供していたものを遊んでいれば楽しかったかもしれない、という可能性を殺していますし、GMが提供するものには(情報格差があるので)PLが提案するものよりもマシなものである可能性が高い、という前提を度外視してます。*1
この辺の権限の移譲については、以前にエントリで取りあげています。

有限責任無限責任 - TRPG履歴
http://d.hatena.ne.jp/standby/20081029/p1

設定に責任を持つのは、情報格差の観点からもPLではなくGMです。PLが提案しても、GMがよしとしない(できない)限りは、設定は採用されるべきではありません。それはPLが(いい気になるために)どれだけやりたいことだったとしても、です。
情報格差GMの権力をもたらすという前提に立った場合、GMは設定の採用/不採用を強制できる立場であり、情報格差を意図的に作り出すことができるからこそ裁定者としての強権を振るうことができるからです。
ま、そんな肩肘張らなくたって遊べるやんってのもその通りです。これは、どちらかといえば「GMが権力を持たなければならない場面」を想定しているだけのことです。


PLが設定好きで、設定マニアで、設定の整合性を取るのがうまいなら、その部分はPLに投げ出してもかまわないよ、というのが実はこのエントリの結論でもあります。公式設定にしろ、「物語に都合がいいように設定を生やす」のは常套手段です。それを我々が(できるだけ上手に)やって、なんの問題があるんでしょう。ましてやGMとPLに本質的な違いがあるんでしょうか。同じセッションを遊ぶ仲間なのに。
重要なのは、セッションの場においては、設定者であってもそれが開示されるまではその設定を利用することはできず、開示タイミングを握るGMがセッションをハンドリングすることができることです。*2
GMが骨組みをおさえていれば、テクスチャがどうだったとしてもそれほど問題にはならないだろうってことです。

*1:場合によってGMが提供するものよりPLが提案するもののほうがマシなことがあることは特に否定しません

*2:この点は事前にGMとPLで合意を取る必要があります。どんな手法であれ基本的なことではありますが、「TRPG」という枠組みに依存しすぎて、この辺がおざなりになってたな、という反省です