シナリオ再構築−デモンパラサイト「力の代償」

乗りかかった船の勢いでこちらの企画に乗っかってみたいと思います。

[TRPG] シナリオカルテによるシナリオ診断: Dragonoid Factory
http://dragonoid.txt-nifty.com/df/2009/06/trpg-85d7.html

余談ですが、書き込んだ人の識別が簡単にできるように、はてなのユーザIDを持っていない人はコメントできないようにしてます。管理コスト削減でそういう方針なのでご理解ください。トラックバックはいけるはずなので、長い文章とかの場合はそのほうがいいかもです。


固有名詞とかは省略というか、あまり意味はない(名前がミスリードになるとかヒントになるというシナリオではない)ので、NPCについては犯人A、被害者B、同僚Cの3人分だけ記述しておきます。芯になる要素だけ書いてると思ってください。
また、NPCの心情、心理的なものを考えるのが好きなので、私はその辺を中心に分析して再構築してみます。どうにも分析だけだと、どうすりゃいいの? って部分をクリアできなさそうなので、「私がリライトするとしたらこんな感じ」みたいなのになりましたが。
ちなみにシナリオ再構築系のことは、しょっちゅう公式シナリオでもやってます。遊んでみて気に入らないところを自分に都合のいいように直してたら再構築状態、ってパターンが一番多いんですけども。しかも一回だけじゃなく何回もします。それが結構勉強になった、ってのはるあるかも。
まあ余計なお節介だったらスルーしてください。あと、ご自身のところで公開されてたので、ここでも公開しちゃってますが、問題あったら削除しますのでお手数ですがご連絡ください。


下記の文章は、要素決定順に並べてます。具体的には「犯人Aの目的」「被害者Bの立場」「犯人Aに襲撃された状況」「同僚Cの立場」「同僚Cが誘拐される状況」「犯人Aの人となり」「ストーリー展開」という順番で今回決めていきました。
犯人Aの目的と被害者Bの立場、あと同僚Cの立場は大筋で使いましたが、細部は弄ってます。弄った上で、「シナリオ作成の作法」の無秩序さというか、私の作り方のいい加減さなんかも伝わればなと思って、あえて整理せずに並べてます。なので要素決定が進むと事前に決めていた要素がいつの間にか変更されてたりします。
あと、「だ、である」と「です、ます」が混ざってるのは仕様です。上から目線っぽいのも仕様です。

犯人Aの目的

横領事件を起こした結果、解雇されたことへの恨み(逆恨み)を晴らすこと。そのために被害者Bを襲撃する。
執心していた同僚Cを手に入れたい。そのために同僚Cを誘拐する。

被害者Bの立場

犯人Aの(元)上司。
犯人Aに襲撃され、これが事件化する。死なれると後々困るので重症で意識不明。
(解雇前の)犯人Aに対する恨みのあるなしで状況は変わると思われる。この場合、犯人Aに対する恨みはなく、むしろ横領事件を起こされて残念に思っている、とする。

犯人Aに襲撃された状況

無理矢理連行されたことにするか、反省の色を見せない犯人Aに説教しようとしたのか、反省の色を見せた犯人Aに騙されて人気のない場所に誘導されたのか等、バリエーションが想定される。
被害者Bがどういう人柄だったのかは、職場(=同僚)での聞き込みで判明する。この場合、「厳しいが人情味のある頑固親父」という被害者Bのキャラクタープロットから、無理矢理連行の路線は捨てて(犯人Aを容疑者にするならなおのこと)、犯人Aを説教しようとしたパターンを採用することにする。じゃないと被害者Bの人柄が生きてこない。
病室では、うわ言で犯人Aの名前と一緒に「はやまるな」とか「馬鹿なことをするな」とか言わせると、被害者Bの人柄をより強調することができる。

同僚Cの立場

犯人Aにストーカーまがいに付きまとわれていた=よくは思っていなかった。
勤務態度も悪い犯人Aに対する感情は、いいものではなかっただろうことは想像に難くない。
しかし、犯人Aの人となりを描写する上ではキーパーソン。なので都合よく使う必要がある。
犯人Aを描写する際に、「なぜ借金があったのか?」「なぜ勤務態度が悪かったのか?」は考慮する必要がある。理由もなく借金が生えたり、職場での態度が悪い人はいない、というかそんな人は雇用されない。
「犯人Aは入社当時、気弱でまじめな性格だった」と設定したとする。しかしまじめなだけじゃやっていけないので社会人のつらいところ、努力しているのに仕事でも目立った結果が出せず、次第にやさぐれてギャンブルにも手を出すようになった、とか。
そうした部分を敷衍して、「後輩として入社した当時、まじめで誠実な先輩だった犯人Aと付き合っていた」という設定を生やしてみる。そうすると、犯人Aの仕事上での挫折、身を持ち崩していく過程、別れた後も付きまとってくる偏執的な性格に歪んでいったこと、がスムーズに説明できるようになる。
なので、「性格的にははっきりしていて芯が強く、明るいキャラ」、ということにする。人間、自分にはないものを持っている人間を好ましく思うし、また同時にそういう人に対して妬ましく思うものだから。最初は惹かれて、いまでは憎たらしい、という「可愛さあまって憎さ百倍」みたいな関係のほうが、犯人Aの動機もわかりやすい。母性本能強めなキャラかもしれない。

同僚Cが誘拐される状況

PCが同僚Cと接触した後、にするのが無難。つまり、PCがどう足掻いても同僚Cは誘拐される。そのほうがクライマックスに持って行きやすい。
PCが犯人Aの職場訪問をした際に、同僚Cと接触する。被害者Bとの接触も終えていれば、その日の夜に同僚Cが誘拐される、という流れ。
PCが勘でもなんでも同僚Cの身辺を警戒する、となった場合でも、犯人Aに呼び出されて単独行動を取り、結果的に誘拐される。まさか誘拐されるとは思いもしなかったし、被害者Bを襲撃したのは犯人Aだろうという疑念もあるし、自分が言えば犯人Aも思い直すかもしれない、という昔付き合ったよしみもある、という感じ。
ここでPCが取る方法によってはバトルを発生させてもいい。でも誘拐は決定事項なので慎重に。下手に対決させて泥沼になるぐらいなら、多少見え見えでも(誘拐しやすくなるように)勘弁してくださいとPLにぶっちゃけたほうが無難。
そして、同僚Cの奪還をラストバトルに据えるとシンプル。

犯人Aの人となり

真面目で努力家だが気が弱く、仕事でも同僚に手柄を取られちゃったりしていまいち成果が出ない、というか評価されないようなキャラ。職場の異動とかはしてないことにする。じゃないと同僚Cと付き合ってたとかいう設定が飛んで消えてしまう。
被害者Bがいい人なのはわかっていても、評価をしてもらえない状況に、次第に追い詰められてギャンブルに手を出す→借金をこさえる、のパターン。それで余計怒られちゃうわけだけど。生来、真面目なだけに情緒不安定になり、同僚Cとも別れることになる。そして横領に手を出した、と。
なので、解雇後、被害者Bに会いに行き、なぜ自分が評価されなかったのか等々の疑問をぶつけたところ、正面から受け止めた被害者Bが説教を始めてしまったがために逆上、かっとなってやっちゃった。
性格にそぐわないことやっちゃったもんだからさらに情緒不安定になり、精神の安定を求めて同僚Cを求める。電話で呼び出すときもかなり支離滅裂で、同僚Cにすがるような感じだろうと思われる。ほだされた同僚Cが呼び出されてきたところで、いまの自分に自信なんて欠片もないので、無理矢理拉致っちゃう。けど、そのせいでさらに自責の念に苛まれる。
同僚Cの救出のためにPCが現れた時、どっちかといえばほっとしたんじゃなかろうか、という性格。でもやるだけやっちゃったのでもうどうにでもなれという感じでバトル。思いつめた真面目人間は普段やらないようなことをやっちゃいます。

セッティングされる場面

依頼を受ける場所

デモパラはわからないので省略。

警察署

事件の概要が聞ける。依頼者から誘導されて訪れる場所。

被害者Bがいる場所

病院。依頼者から誘導されて訪れる場所。

同僚Cがいる場所

犯人Aの職場。おそらく同僚Cは事務屋さんが妥当(職場でどんな人とも必然的に接触があるのは経理とか総務)と思われるので、職場訪問したら応答してくれるのもこの人。んでもって持ち前の責任感の強さからPCの対応とかもしてくれるんじゃなかろうか。依頼者から誘導されて訪れる場所。

同僚Cが監禁される場所

案外犯人Aの自宅とかかもしれない。会社の資材置き場とかが無難そう。

ストーリーの分岐

導入後、病院、職場にいって、被害者B、同僚Cと接触することによって、同僚C誘拐イベントが発生。なので警察に行く必然性はあんまりない。
同僚Cの監禁場所への誘導をどうするか。被害者Bがいきなり意識を取り戻して、犯人Aなら会社の資材倉庫にいると言っていた、と依頼者から伝える形でもいいかも。行方不明状態だった犯人Aと接触したときにそんなことを言っていた、ということにすればいい。若干不自然だけど、そんなに不自然でもないはず。
裏を読むか素直に従うかはPL次第。ここまでの展開上、裏を読んでもしょうがないってのは伝わってる気がする。
あとは会社の資材倉庫でバトルでオッケー。数値的なものはわかんないので、ボスが一人でもバランス取れるかどうかは考慮外。
エンディングでは、意識を取り戻した被害者Bが犯人Aを許したり、同僚Cもやり直してきてね的なことを言って、なんとなく大団円になりましたかね的空気でエンド。でも犯人Aは刑務所行きな(傷害と拉致監禁は動かしようがない)。
オチにだけ謎の少年を追加したらキャンペーン、しなかったら単発セッション、て扱いでいんじゃないかと。ヴィシャス? とやらになる条件もわかなんないので。

PLの楽しみポイント

あんまり考慮する必要はないと思います。
シンプルで短めのシナリオです、って断りと、肩の力を抜いて参加してもらえるシナリオです、ってあたりを押さえておけば十分じゃないかなと。
少なくとも、凝った構造はあんまりいらないと思います。なぜなら、PLは勝手に邪推して凝った構造にしたがるからです。世の中そんなに複雑じゃないことだってあります(リアルリアリティ)。
PLの楽しみはPLが作るべき、GMは(マスタリングにおいて)それを阻害しないようにする、というのが私の流儀かつコンセプトなので、PLがやろうとしたことをできるだけ叶えるように(マスタリングで)すれば十分だと思います。自分から積極的に動きもしないで「ストーリーが単純」とかいうPLには「はいはいお客様お客様」とでも答えてあげるがよろし。
たぶんこのぐらいのお話だとけっこう短い時間でもできると思うので、GMの練習にも適していると思います。PLに無駄な時間は使わせず、GMの経験を積むには、こんなぐらいでいんじゃないですかね。私の主活動がオンラインセッションなので、これでも2時間から3時間てところか、と想定してますが、オフだともっと短いんじゃないでしょうか。
シナリオの要素の見通しやすさ、がシナリオの出来不出来だと私は勝手に思ってるので、こんぐらいコンパクトにまとめられたほうがいんじゃないかなあ、という例示でした。まあ、弄る気になればなんぼでも要素追加はできますが、そういうのは状況を複雑にしてPLの理解を阻害するだけ、ってこともままあります。
ところどころ設定いじっちゃったのは、私もシナリオ作る人だし、GMもする人なんで勘弁してください。

うまく作れないポイントへのコメント

  • 犯人に関する情報(動機や目的、居場所など)をうまくシナリオ中に分散できない。チンピラに関する事件をからめてはみたが、どうもすっきりしない。

今回、チンピラについてはざっくり削除しました。やっぱり登場が唐突すぎてストーリーに馴染まないと思うので。まあ犯人Aのキャラに馴染まないというのもありますが。
「犯人がまったくわからない状況で捜査を開始する」というならまだしも、今回のシナリオではわりと序盤で犯人に関する情報は出てるので、「動機」を周辺からばらさせちゃって、「居場所」を接触者から出して、「目的」は本人語りしてもらえばいいや、としています。
犯人を追う側の心理として、「本当にそいつが犯人なのか?」って部分がクリアできていれば追っかけることはできますし、細かいことは捕まえたらわかる、で進める(進めてもらうように誘導する、ぶっちゃける)でいんじゃないかなと。

  • 「犯人は謎の人物からヴィシャス化する力をもらった」という背景を入れたいが、うまく落とし込めない。

どうしたらヴィシャスになるのか? はよくわからないのでそこは無視するとして。
「大きな背景」はセッションを選ぶと思います。なので、「単発セッションならばっさり省略」でいいと思うし、「キャンペーンセッションなら最後に挿入」でいいと思います。
依頼者あたりに「どうしてヴィシャスになったのか?」みたいなことを言わせて、その後に謎の少年を出すとか。それで伏線にして以下次回、みたいな。出すとしたらそんな形で十分じゃないですかね。まあ以下次回はなしで出すだけってのもありだとは思いますが。

  • タイトルにあるように、犯人を通して「超人的な力を手に入れたが、その代償として人間としての道をふみはずした」というテーマを盛り込みたいが、うまく落とし込めない。

ここんとこ、デモパラの構造に絡むので私はよくわかんないんですけども、「力が人を歪める」ってテーマなんでしょうか。
でも、力を持ってすぐ歪むような人は、元から歪んでると思うんです。いい人が力を持つことによってじわじわと歪んでいく、ということであれば、もっと時間がかかるだろうし、単発セッションにも向かないと思います。
なので今回は、「もともといい人だったんだけど、ちょっと疲れちゃってて、そんなタイミングで力なんか手に入れちゃったから、あれよあれよといううちに悪いほうに転がりきっちゃった」という展開にしてます。
でも、元のシナリオの記述からすると、元から素行がよくない人を想定しているんですよね。その場合って、「力は人の歪みを強調・強化する」ってテーマになるんじゃないでしょうか。
要素を単純化しちゃうと、「力」って現実世界で言うところの「ナイフ」みたいなもんですよね。「ナイフ」の攻撃力が高すぎて扱い損ねて、思ってもいなかったことをやっちゃう(=過失傷害になる)ってほうが展開的に楽だし説明もあんまりいらないような気がします。わかりやすいから。あいにくとナイフどころじゃない力があったんで大怪我になったわけですが。

まとめ

こういう心理的な要素を重視するシナリオって、えてしてそういう要素をPLにスルーされるもんですけども、PLにスルーされてもかまわない、ぐらいの心境でマスタリングする必要もあると思います。
あと、今回再構築したのは一本道シナリオってやつなんですけども、実際の一本道ってのは、「PLの提案をGMが却下し続ける」ことによって、「PLが一本道だと"感じる"」時に発生する、なんだか曖昧なものだと私は認識してます。
ぶっちゃけ、PLが一本道だと思わなきゃ、シナリオが一本道だってかまわないです。でも、PLの提案を全部受け入れろということではなくて、PLの提案を受け入れられない場合、却下する理由を明快に提示する必要がある、ってことだと思ってます。
「なんとなく」とかはダメで、あまつさえ「それをしたら面白くない(面白くなくなる)から」なんていわれたら、せっかく提案したPLがどう思うか、なんて考えるまでもないですよね。「ごめん、それは想定外だった。ちょっと待って考えるから」ぐらいして、"検討した結果"として「ちょっと厳しいなー、こういうのにまからない?」とかの落とし所を提示できれば、まあPLは満足してくれるんじゃないかなと。
一本道はシナリオじゃなくてマスタリングの問題だと思うんですよ。環境的に、GMが能力的に無理といえば無理強いはしないように見受けられますので、B.Wさんのところなら、ぶっちゃけマスタリングでいけるんじゃないかなと思います。
少なくとも発想というか、シナリオの構成要素の抽出は十分できてると思うので、あとは組み上げ方というか、組み合わせ方で、自分の納得する方法を模索するだけでいんじゃないかな、と思います。この辺は経験というか、慣れかなと。