(27−3)
さらに続きです。
それに違和感を覚えた。
自分は、それを知っている。
サタンと呼ばれるシュネルギアを知っている。
だが、知るはずがない。天使の知り合いはいない。……そこまで考えて、はたと気づいた。
一人だけ、たった一人だけ、知り合いと呼んでいいかどうかはともかくとして、天使になった奴は知っている。
遠矢亜梨花。自分の前任、彼女の相棒、そして、彼女が射殺した、ギアドライバー。
天使になりかけたところを殺された。そう聞いていた。目の前で撃たれた。それを見ていた。
もしあの時、死んではいなかったとしたら。
彼女の撃ったその弾丸に細工がしてあったなら。
亜梨花がいま、ここにいるというのなら。
数奇な運命、などという生易しい言葉ではなく。彼女を死なせた逃避ですら、次の行き止まりに過ぎなかったのだというのなら。
この世は遍く喜劇だ。逃げ場などなにもなく、人生という名の群像劇を死ぬまで演じ続けるしかない。
お前が俺を選んだのか、俺がお前を選んだのか、そんなことはどうでもいい。
お前は俺を許してはくれないだろう。彼女を死なせた俺を、許さないだろう。
これこそが自分の望んでいたものだ。完全に、完璧に、完膚なきまでに許されるないことをこそ望んでいたのだから。
後悔と懺悔の奴隷として、自分は戦う。